先日、久し振りに京都国立博物館(京博)へ足を運んだ。私が博物館へ足を運ぶのは一年振りくらい? 目的は「鑑真和上と戒律のあゆみ」展である。この展示のめだまは京都国立博物館で45年振りの展示となる国宝[鑑真和上座像]であった。ただこの展示そのものは古文書の列挙からはじまっており、若干敷居が高いと言えなくもなく・・。
そんななかで意外に面白く、敷居が高いと敬遠しそうな人におすすめしたいのが、鑑真和上が5度の失敗を経て来日し唐招提寺を創建するまでを描いた絵巻[東征伝絵巻]シリーズである。この[東征伝絵巻]のどこが面白いのかといえば、登場人物の表情や動きがひじょうに豊かで、人物一人一人が個性的に描きわけられている点である。鑑真和上の渡日は苦労の連続だったのかもしれないが、彼を囲む人々の表情はどこか陽気でのどか、観ているこちらはほっこりする。この作品と描かれた年代の近い[鳥獣戯画]と同様、マンガを観ているような気分になってしまう。一筆描きのような人物表現は観ていて飽きない。
作品を眼にしながらここぞとばかり単眼鏡をだし、くるくる回しピントを合わせると、まるでカメラのファインダーからのぞいているように人物たちが私の目の前に現れ賑やかに躍り出す。そう、単眼鏡で観るのがおすすめである。肉眼でみても、この迫力は感じにくい。これは、カメラを手にしてしまった者の悲しき名残りなのかもしれない・・。
現在の京博は、人の姿もまばらで久し振りに快適な博物館鑑賞ができた。