No.5 ステファン・シェイムス「Power to the People」@藤井大丸 ブラックストレージ
この作品は、1960年代アメリカに於ける黒人への社会的劣悪環境と戦う人々、そして時代を写した作品である。同時にステファン・シェイムスは、自身が政治と関わる一つの方法として写真を選択している。
ステファン・シェイムスの写真を見ると、実に真摯的に街や当時の人々が撮影されており、人々の誇りや威厳が集約されているかのようなセレクト内容だった。その一枚一枚が政治や社会に対する無言で強固なメッセージ性を帯びており、彼の一人間としての強い信念も感じる。
それは、エートス(人間の持続的性格や状態)を求めた古代エジプト彫刻のように、一瞬の理想像を視覚化したようなシーンが多い。これは人々に対するリスペクトの気持ちとともに、秩序の先に生まれるであろう「平和」を願う切実な意思の表れなのではないだろうか。