20年ほど前、観たいと思いながら、観る勇気が無かった映画がある。
公開当時、観てしまうと直観的な描写の怖さに憑りつかれ、自分自身心理的に追い詰められてしまいそうな気がした。
そんな気持ちもいつか心の片隅に。忘れたかのように思えていたのに、やはり私の心の奥でじっと待っていた。
それがエドワード・ヤン監督の『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』。
一か月程前、遂にこの映画を劇場で観ることが出来た。
4時間近くの長編にも関わらず、会場は映画ファンでほぼ埋め尽くされ驚いた。
善と悪 光と影
混沌とした時代。
それは少年たちの影となり、猟奇的な美しさをももたらしてくれる。
そして同時に、唯一無二の光でもある。
彼の罪、それは果たして彼だけのものなのだろうか。
作品は日を追うごとに心の奥底へ、美しい旋律で響いてくる。
この作品は1992年に日本で公開されているものの、日本ではDVDも未発売の幻の名作と言われている。