混在を許す 耐える 完全に受動的に受け入れる
多種多様なものに関心を持ちながら
投げやりになること・・
凡庸にもならず 斜に構えることができること (Wolfgang Tillmans )
1990年代、ユースカルチャーの代表と言われたヴォルフガング・ティルマンスの展示を観に行った。
初めて目にしたティルマンスの空間。
なんて自由で開放された世界なんだろう。
そこには、分別や差異、拘り、こうあるべき・・といった世の中を包み込む無意識のフィルターを、そっと外してくれるクリアな世界が広がっているようにも見える。感じる身体、日常は、世界を肌で掴む瞬間が散りばめられたもうひとつのホリゾンドなのかもしれない。 身体はもっと、自由に世界と呼応しあい対話できるもの。対話はいつしか一方通行へと変化し、世界は中心を歪めながら蛇行して行きつつあることへの痛切な叫びも静かに含まれているように思う。世界をダイレクトに感じつつ、意外に受動的で優しさも垣間見ることのできる作品群。知る生の豊かさが大きければ大きいほど、死が近づいた時のそこはかとない空しさも知っている。だからこそ彼の世界観は、混沌とした中ですら、どこか澄んだ光と息吹を宿しているのではないだろうか。
展示はいくつかの部屋ごとにテーマを区切り、プリント、動画、スライド、過去の仕事、写真集群etcと多岐にわたっている。個人的には"Truth Study Center "シリーズ、彼自身のブリーフ一枚での動画が好きだった。
Wolfgang Tillmans "Your Body is Yours"
@国立国際美術館
〒530-0005 大阪市北区中之島4-2-55
TEL 06-6447-4680
会期 2015 7月25日(土曜)~9月23日(水)
open 10:00~17:00(金曜は19時まで)
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彼は子供の頃、天文学が大好きだった。
10歳のころから天体望遠鏡を眺める日々。
もともとは天体の画像を残したくて写真を始めている。
天体観察はどこか不思議な体験らしく、暫く空を眺めていると、不意に自分が宇宙と一つであることを実感できる瞬間が訪れるらしい。
夜空との一体感。静かに真の孤独を紡ぐとき、はじめて夜空とひとつになれる。
彼のセンシュアルと言われた部分は、そこに回帰するのかもしれない。
そんな少年期の豊かな時間が彼を築き上げているのではないかと思う。
タイトルの"Your Body is Yours"は背後に潜む重層的な比喩も込められている。身体に対するオーナーシップとは?あなたはどう思いますか?
自分の身体なので本来自由で有るべきなのに、意外に自由と言えないのでは?
背後に潜む重層的な比喩も多聞に込められている。
今回の展示は巡回無しの大阪展のみ。
東京中心の展覧会指向に一石を投じる意味もこめているらしい。
悪くないと思う。
*内容はギャラリートークも参考に書かせて戴きました。