猫たちのバス停
遠野の深い森の中、あるバス路線の終着は古民家のような庭先。
そこは古い民家のようでもありながら、軒先に小さな待合椅子もある。
日当たりのよい静かな森の一軒家。
優しく当たる日差しが心地よさそう、寒さもどこかへ。
バスは終点であるこのお宅の庭先で一休みとなる。
そのまま折り返しのバスで市内へ帰ろうと、待ち時間脇道を少しだけ散歩へ。
それにしても不思議なバス停。
普通のひとのお宅の庭先がバスの終点だなんて。
バスの運転手さんに、どんな人が住んでいらっしゃるのか尋ねると、
”猫が数匹”というお話でさらに驚く。
ひとは・・・。
実は少し前、このお宅に暮らしていらした方はお亡くなりになられたのだという。
ただ、残された猫たちが不自由なく自由に出入りできるように・・と、家の入口を少しだけ開けているらしい。
遠いご近所さんの心配りなのか、バス会社の方なのか。
玄関はまるで人がいるかのようにゆったりとうららかな日差しが入ってくる。
中も荒廃した様子は全く感じられず整然として、猫たちが棲むというより、おおらかな人の気配すら感じる。
猫たちは、姿の見えないご主人の気配と誰とも知らぬ優しさに包まれてのんびり暮らしているんだろう。