今、中国の反日報道を含め尖閣諸島の報道が多い。
報道を目にするたび悲しくなってしまう。
もうずいぶん前の事ではあるけれど北京に一か月住んだ事がある。
とても寒い2月末の北京。
当時比較的物価の安い北京で語学の短期留学・・という名の遊学をしていた。
どうせ息抜きで行くのなら面白そうな大学が好いな・・という事で、大学選びは語学にあまり役立ちそうもない中央戯劇学院という映画関係の大学を選んだ。
中央戯劇学院は北京の比較的中心部である故宮のすぐ裏にあり、当時は街中にあるというのに、かなりこじんまりとしていた。
職員の方も含めどちらかというと、のんびりしていてアットホーム。
彼らの自然で木訥とした日常からはどこか温もりを感じとれた。
決して新しくない建物も、何処か冷たさを拭い取ってくれるような気がした。
この大学の出身者は映画俳優や監督も多く、私が遊学していた時はたまたま国際映画祭の主演男優賞を受賞した俳優さん、中国のTVに出演している女優さんなどが在籍中だった。
学生寮が大学の敷地内に併設しているので、朝はそんな俳優さんたちの澄んだ発声練習の声で目が醒める。
彼らは俳優と言っても普通に学生で、気取る事もなく毎日練習、食事は学食で取っているのをよくみかけるし、もともと生徒数が少ないので、とても身近に感じられた。中には日本からの留学生と仲良くなって寮へ遊びにくる人も。
私と言えば、全く使えない北京語の危機的状況よりも、目の前に広がるどこか澄んだ気配が心地よく、何かとんでもないことが起こりそうな日常は小さな驚きの連続でもあり、日本を離れた寂しさを紛らわす事ができた。
報道を眺めながら、そんな昔の北京でのことを思い出してしまった。
昨日の朝日新聞、
村上春樹さんの寄稿文ではないけれど、今回の出来事で広がって来た文化や人の交流が縮小したり歪曲してしまうのは悲しい。