花巻からふらっと夕方の景色が見たくなって遠野方面の列車に乗った時のこと。
たまたま座ったシートの向かいには、ショートヘアの一人の少年なのか少女なのか、運動服姿なのにとても中性的な美しさをもった子がごろんと座っていた。
窓を眺めたり、時々二人がけのシートにうつぶせになり此方を眺めてみたり・・。
とにかくドキドキする位、野生的にも見える瞳が澄んでいて綺麗なのだ。
話しかけたい・・と思いつつ何だか恥ずかしくって話しかけられないる小心者の私。
そうこうしていると列車は発車時刻になり動き出した。
する事もないから外を眺めて撮影していると、逆に彼なのか彼女なのかに
「良いカメラ持ってますね」
と話しかけられた。
その声から、少女であることが分かった。
少しだけドキッとしつつも、
「何故カメラに詳しいの?」と尋ねると
「私の家、写真館なんですよ」と彼女は言う。
それからは、他愛もないような事をポツポツ話した。
不思議なもので、初めて逢った人なのに話の間が合う。
何でも無いような事をどちらとも無くぽつりぽつりと喋るのが何だか心地よかった。
聞くと彼女は一関市にある高等専門学校の学生。
普段は寮生活らしいのだけど、丁度春休みとなり、実家が遠野なのでこれから帰宅するところとの事だった。
震災の話を少し聞いてみると、一関でもやはり当時かなりの被害があったらしい。
おまけに学校校庭の一部に放射線量の高い場所があり、立ち入り禁止区域が出来ているとのことだった。
遠野は今年雪が多いのに、震災の影響で除雪費用が出ないらしく、除雪されないから雪かきが大変!と。
遠野の雪解けは意外に遅く、毎年四月の半ばくらいまで雪が残っているらしい。
「将来は実家の写真館を継ぐの?」と聞いてみると
「ううん。 ロボット開発とかやってみたい」と返ってきた。