堀川御池ギャラリー |Roger Ballen(ロジャー・バレン)
堀川御池ギャラリーは2010年に地域住民の誘致活動でオープンした、市民開放型のギャラリーとのこと。
もともとは大政奉還の際、京都の将来を憂いた街のひとたちが、”まず学問に投資を!”という呼びかけを起こし、資金を募り創設された小学校だったらしい。
薄暗いなかロジャー・バレンの作品を観た私は、軽く殴りつけられたような衝撃を受けると共に、どんよりした厚い雲が頭の中を立ち込めて行った。不穏で猟奇的、殺気立つ視線と気配、血なまぐさいモルタル、冷んやりとした足の感触。あちこちに潜む息の音。秩序と無秩序、生と死の匂い。
どこまでが狂人沙汰でどこまでが正気なのかすらも定かではない。
そもそも、その定義は何処にあるのか?割り切れるものなのか?
私達の日常生活で”良し”とする価値観に真っ向から立ち向かったこの作品は、危うさを漂わせながら、どこか一抹の懐かしさと、強い生命力を感じてしまう。
私たちの前に広がる平穏な日常は、皆、秩序と礼儀を守り品よく生きるよう努めるものなのかもしれない。ただこの作品を観ていると、それら刷り込まれた美徳的価値観だけを背負う事が、心の奥に潜むもう一つの真実から目を背け、忘れさせてしまう場合もあるのでは?と思えた。
秩序ある美しい世界が多くの人の心をつかむのもよく解る。ただ、、。
今回の写真祭で一番印象的な作品だった。
御池ギャラリー ロジャー・バレン